実に2年半ぶりの編集後記更新です。「掲載店舗を増やすことを優先しているから」と自分に言い聞かせて放置していました。編集後記を無視していた甲斐もあってか掲載店舗数は約300店舗に。
この約300店舗の中から、六文そばさんについて取り上げたく、久しぶりに編集後記をアップさせていただきます。
六文そばとは?
六文そばさんのことをよくわからないという方もいらっしゃると思いますので、まずは六文そばさんの紹介から。メインはこの後の内容なので、簡単にまとめさせていただきます。なお、本サイトの運営者も六文そばさんの歴史等についてはあまり詳しくありません。以下の情報も他メディアの取材記事を参考にしていますので、歴史について詳しく知りたい方は下記の記事や立ち食いそばの書籍などをご覧いただくのが良いかと思います。
真っ黒なつゆ、アゴ崩壊の絶品「げそ天」、黄色い看板…みんなが知らない、魅惑の立ち食い「六文そば」の世界
上記の文春オンラインさんの記事によると、六文そばさんは1970年代より「株式会社そばのスエヒロ」の直営店としてチェーン展開した立ち食いそばで、一番多い時は25店舗ほどあったそうです。しかし、1980年代には「株式会社そばのスエヒロ」による六文そばさんの運営が終了し、各店舗の店長が引き継いで運営をすることに。店名も看板も同じでもメニューや味が違う(詳しくは後ほど)の発端は、この運営終了が発端のようです。
一由そば、そばのスエヒロ八丁堀店も六文そばがルーツ
ジャンボゲソ天で人気の一由そばさん、そばのスエヒロ八丁堀店さんも六文そばさんと非常に関係が深いお店です。まず、一由そばさんについては、元々は六文そば日暮里3号店として営業していたお店。2008年に独立する形で一由そばになり、進化を遂げていったそうです。そばのスエヒロ八丁堀店さんは、「株式会社そばのスエヒロ」がフランチャイズ展開していた「スエヒロ」という立ち食いそばが発端のお店。その後、一度は閉店しましたが、2022年より一由そばさんの創業者の方が店を継ぐ形で営業を再開しています。
一由そばさんとそばのスエヒロ八丁堀店さん、さらには一由そばさんから独立した一◯そばさんは、このように六文そばをルーツとしています。
なお、この辺の話も大衆そば・立ち食いそば研究家の坂崎さんが書かれた下記の記事で詳しく紹介されています。記事内にある六文そばとスエヒロの関係性の図解はとてもわかりやすいです(いつも参考にさせていただいております。ありがとうございます)。
「げそ天」1日500食、顔は小泉純一郎似…業界の超重鎮「ミスター立ち食いそば」が、八丁堀の名店を救った話
2024年8月時点で現存する六文そば
さて、今回、編集後記を書いているのは、2024年になった今も残る六文そばさんの店舗を紹介するのが目的です。最盛期は25店舗ほどあった六文そばですが、2024年8月現在で残っているのは6店舗。うち1店舗(日暮里2号店)は長期休業中で、営業している店舗に限れば、人形町店、日暮里1号店、金杉橋店、須田町店、中延店となります。
この5店舗は「六文そば」という店名と黄色の看板こそ同じですが、蕎麦の種類、つゆの味、天ぷらの種類や味、メニューのラインナップ、価格は異なります。同じようで1店舗ずつ異なる立ち食いそばです(強いて言うなら、「黒いつゆ」というのは同じですかね)
「蕎麦と町中華と銭湯と」には、5店舗全て掲載していますので、各店舗の特徴を紹介します。
人形町店:一番安い六文そば。天ぷらそばが200円台
人形町駅や水天宮前駅の近くにある人形町店は、六文そば各店の中でも安さが特徴。
2024年8月現在で、かけそばが200円、天ぷらそばが200円台から食べることができます。六文そばさんの六文は昔の通貨の単位「文」が由来だそうで、六文は現在の紙幣価値で200〜300円ほどのようなので、店名の由来となる価格を今も貫いているお店です。この価格で食べられる立ち食いそばは、六文そばさんに限らず、都内の立ち食いそばではほとんどありません。
味は、黒くて濃いつゆ、昔ながらの茹で麺(興和物産)が特徴です。
日暮里1号店:太めの生蕎麦で独自メニューが豊富
日暮里1号店は、日暮里駅前のステーションガーデンタワーの中にあり、5店の中で唯一、路面にないお店です。日暮里1号店の特徴は太い生蕎麦。他の六文そばさんより一回り太い蕎麦が特徴で食べ応えがあります。
また、メニューが豊富なのも特徴で、天ぷらはげそ・紅しょうが天、海鮮天など、日暮里1号店でしか見かけない天ぷらもあって種類が豊富。ご飯ものではドライカレーもあるようです。
金杉橋店:かつての六文そば密集地・浜松町に残る唯一の店舗
浜松町周辺にはかつて、金杉橋店、浜松町1丁目店、大門店(正しい店舗名わかりませんでした)があり、六文そばが密集していたエリアだったそうです。残念ながら今は金杉橋店の1店舗のみ。ビルの1階に店舗があり、日焼けしたメニューなど、外観や内観に歴史を感じるお店です。
メニューは店内調理の天ぷらを使ったそばが中心で400円台。麺は茹で麺で、つゆはあくまで他の六文そばさんとの比較ですが、そこまで濃くない印象です。
須田町店:六文そば誕生初期からあるお店
須田町店は、淡路町駅や小川町駅などが最寄り。少し歩けば神田や御茶ノ水からも徒歩でいけます。六文そばさんが誕生した1970年代初期から続く、現存する各店の中でも歴史の長いお店のようです。
須田町店も人形町店や金杉橋店と同じように昔ながらの茹で麺で、黒いつゆと店内で揚げた天ぷら。天ぷらは10種類程度あり、400円台で食べることができます。現存する六文そばさんの中でもオーソドックスな東京の立ち食いそばという印象を持っています。
中延店:2022年リニューアルの新星六文
中延店は2022年に運営元が変わってリニューアルしたお店。現存する六文そばさんの中で、近年リニューアルしたお店はここだけです。
リニューアル以前の中延店に行ったことがないため、以前との比較はできませんが、茹で麺(興和物産)、黒いつゆは他店と同じ。価格は天ぷらそばが500円〜と他店より少し高いですが、植物油で揚げた天ぷらはクオリティが高いです。
現在、営業している六文そばさんの中で唯一、日曜日も営業しているので、平日は仕事で行けない人にもおすすめの店舗です。
六文そばのかき揚げそばを比べてみた!
せっかくなので、現存する各店のメニューを写真で見比べてみましょう。全店のかき揚げそばを食べましたので、一気に紹介します。
同じかき揚げそばでも、かき揚げの見た目や使っている具材が店舗によって異なります。人形町店や日暮里1号店は、五目かき揚げそばという名称で、使われている具材もたくさん。反対に金杉橋店は、長ネギと玉ねぎだけのかき揚げで見た目も独特。須田町店は玉ねぎの割合が多めです。玉ねぎ多めなのは中延店も同じですが、中延店は他店よりも一回りかき揚げが大きかった印象。
また、並べてみると、つゆの色も少しずつ異なることがわかります(光の違いもありますので、一概には比較できませんが)。
はじめから店舗ごとに違ったのか、「株式会社そばのスエヒロ」による運営が終わった後に店舗ごとの個性が出たのかわわかりませんが(何十年も食べ続けてて知っている方いたら教えてください)、同じ六文そばのかき揚げそばでも、店舗によって全く異なるそばを食べることができるので、立ち食いそば好きな方には「六文そば食べ比べ」がおすすめです。
六文そばは食べられるうちに食べる
2024年8月時点で残る六文そば各店の紹介をしてみました。
実は、この編集後記を書くことは何ヶ月も前から予定していて、日暮里2号店が再開したらアップしようと思っていました。しかし、日暮里2号店はなかなか再開せず。既に半年以上、休業が続いており、営業再開してくれれば嬉しいですが、このまま閉店ってこともあり得るかもしれません。
実際、この数年の間でも、何軒もの六文そばさんが閉店しています(昌平橋店、浜松町1丁目店など)。おそらく、今後、六文そばが増えることはないと想定されます。現存する六文そばさんもいつか閉店の時が来るかもしれません。「今月いっぱいで閉店です」となった時に「もっと食べておけばよかった」とならないよう、食べられるうちに沢山食べておきましょう(2日に分けてこの編集後記を書いたのですが、書いてたら無性に食べたくなり、中延店に行ってきました)。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。